2022-02-07 Mon

2019年制作 中/香港
監督:デレク・ツァン
≪キャッチコピー≫
『君が、俺の明日を変えてくれた
君が、私の明日を守ってくれた』
≪ストーリー≫
進学校に通う高校3年生の少女チェン・ニェンは、大学進学のための全国統一入学試験を控え重苦しい日々を過ごしていた。ある日、一人の同級生が陰湿ないじめを苦に自殺し、彼女が新たないじめの標的となる。いじめっ子たちの嫌がらせが激しくなっていく中、チェン・ニェンは下校途中に集団暴行を受けている少年・シャオベイと出会う。共に孤独を抱えた彼らは次第に心を通わせていく。
≪感想≫※ネタバレあり
青春映画かと思っていたらミステリ展開も含まれていたり。
中国の社会問題を織り交ぜながら、見事に映画として
きっちりと仕上がっていた良作。
こんな感じのお話かなと思ったら、もうひと展開。
それならこんな着地かなと思ったら、さらにもうひと展開。
どこまでも続く、物語の連鎖。
いやぁ、のめり込みながら鑑賞してしまいましたよ。
隙が無いというかね。
物語はとても重め。
いじめ問題を主に置きながら、貧富の問題、そこから生まれる
受験戦争や親からの抑圧。
社会や学校の隅に追いやられた二人の少年少女の物語。
人物描写について。
いじめっ子集団は言わずもがな最悪。
結果、主犯のあの娘は死んじゃうんだけど、彼女の
浅はかな考え方や、それが当たり前にまかり通っている性格には
いらだちと恐怖を覚えたり。
けど、これって現実にありえそうだし、我が国日本でもこんな
人間はいるだろうし、こんないじめはありえるのだろうと思うと
めちゃくちゃげんなり。
例えば警察官の対応も嫌だったなぁ。
何でしょう、警察という職業が抱える闇というか。
あの女刑事のチェンに対する言動とか対応とか。
あの若造刑事のこの一連に対する対応とか。
自らの不手際は置いといて、無理やりチェンとシャオベイを引き離すようなあの対応。
もちろん自らの過ちを悔いているとは思うんです。
ただ、それも空回りに繋がっているように見えて。
本作におけるチェンやシャオベイはほんの少しも悪くなくって。
例えばいじめた側の女子高生たち。
彼女たちも受験戦争や学歴社会、そして親からの抑圧によって
性格がねじれているんですよね。
彼女たちもやはり被害者でもあったり。
恐らく、彼女たちを抑圧している親たちもそう。
なんだかんだで社会問題から派生した「悪」でね。
それに比べて、チェンやシャオベイ。
特にチェンに関しては、これっぽっちも悪いところが見当たらない。
彼女を観ていると
「いじめられる側にも問題がある」
何てことは口が裂けても言えない。
シャオベイに関してはやさぐれ坊主なんだけど、彼は彼で
親の愛を受けずに育ったはぐれもの。
ある意味、孤独な二人が共鳴して惹かれ合うのは必然的で。
彼ら二人には本当に幸せになって欲しくって。
物語の着地について。
冒頭と最後はチェンの現在を描き出していて。
どこかで英語の先生をやっているチェン。
それを変わらず見守るシャオベイの姿。
なんとも希望に満ちたラストシーン。
・・・いや、まてよ・・・。
これってもしかして幻想なのか・・・??
だって、殺人を犯した人間が無事に出所してすぐに英語の先生にまで
なれるのか??
とても光がさした希望のお話なんだけど、いくら何でもこの着地は
難しいんじゃないでしょうか。
そう思うと、やっぱりもやっと切なくなる。
とにかく二人には幸せになってほしいなぁと。
そんな感じで。
いやはや、これまた素晴らしい作品なのは間違いない。
先の読めない展開や、最後の着地。
そして中国のお国事情や社会情勢なども勉強になりました。
何より、とても瑞々しい二人の俳優さんを観れて良かったです。
ただ、やっぱりとても痛くてもやもやするんだよなぁ・・・。
≪点数≫
8点
(21.11.17鑑賞)

満足ならクリック!!
スポンサーサイト