2021-04-30 Fri

2019年制作 米
監督:トレイ・エドワード・シュルツ
≪キャッチコピー≫
『傷ついた若者たちが、新たな一歩を踏み出すまでを鮮烈に描く希望の物語』
≪ストーリー≫
フロリダで高校生活を送るレスリング部のタイラーはスター選手で、成績も良く、美人の恋人もいた。厳格な父親と多少の距離はあるが、満ち足りた毎日を過ごしていたある日、タイラーは肩を負傷してしまう。医師は大事な試合に出場することを許さず、さらに恋人の妊娠が発覚して順調だった人生が狂い始める。
≪感想≫
「mid90s ミッドナインティーズ」や「暁に祈れ」を排出した映画製作会社:A24の作品。
演出について。
本作は音楽やカメラワーク、映像がとても特徴的でした。
中でも僕的に印象深かったのはカメラのサイズかな。
スクリーンの比率を操作して、その時々のサイズに合わせていく。
縦長だったり、フルサイズだったり。
恐らく一つ一つのシーンと映像に意味と意思を持たせているんだろうなぁと。
こりゃ何度も観ないと掴めないぞってなもんで。
音楽にしてもそう。
歌詞とストーリーがリンクしていてね。
ここで、ふと残念に思うのが自分の英語力のなさ。
もっと英語が分かれば、もっと深い部分で理解できたこともあったのかなと。
ショートメール的のやり取り的なシーンも文章は長いのに
字幕は短めみたいな。
もったいないなぁ。
とほほ。
お話について。
本作を観ていて邦画「葛城事件」を思い出したなぁ・・・。
ただ本作は、「葛城事件」のその後の希望まで描かれていた印象。
お話は二部構成。
とある中流家庭の家族のお話。
最初は息子タイラーのお話。
タイラーは厳しめの親父に抑圧されながらレスリングと勉学に
励んでいて。
恐らく自分自身でもこうでなくちゃいけないという気持ちに縛られつつ生きてきたんだろう。
そんな中、自らの怪我、そして彼女の妊娠と人生に大きな波が訪れて。
その波に抗うハートも技術もなく飲まれていくタイラーは観ていてとても辛くってね。
先に書きましたが「葛城事件」のように親の抑圧により作られていく
理想の息子と、本当はこんなんじゃないという気持ちが揺れ動く時期に
起こりえる事件はとても恐ろしくって。
はぁ・・・どんより。
次に描かれる物語はタイラーの妹であるエミリーのお話。
殺人の加害者の妹となる彼女。
加害者である兄の弱さや優しさも知る彼女にとってその事件は
とても深い傷となり。
彼女のこの作品においての位置付けは「再生」。
ラストシーンのほんの少しだけ軽くなった彼女が映し出されるシーンは
とても美しかったです。
このパートではエミリーのボーイフレンドとなるルークが最高でしたね。
彼は彼で父親との確執があったものの、エミリーとの出会いにより、
関係も修復されていくことになる。
彼の傷を負っているからこその優しさや気遣いはとてもグッときました。
そして、父親と母親のそれぞれの生活や想いも丁寧に描かれていて、
むやみやたらに攻めることのできない状況にまたどんよりと。
この家族の未来は再生へと繋がっている。
ただ、それでも希望の光が煌めいている感じではなく
まだ、そこには危うさは残っていて。
とても繊細な人生をこれからも歩んでいくのだろう。
ただ、この家族の絆はこれまでよりきっと深く太く
根付いている様に見えました。
きっと、彼らは支え合いながら生きていくのでしょうね。
そんなこんなで。
とても痛みの伴う作品。
誰でも一歩間違えれば、この映画の彼らのようになるのではないか。
あの時、こうしていれば。
あの時、そうしていれば。
それでも、何が起こるかわからない。
その瞬間の繋がりを大切に。
はぁ~~・・・どんより。
良作なんだけど、もう一回は観れないなぁ・・・。
もう一回観ないと発見できない部分もあるんだけどなぁ・・・。
≪点数≫
6点
(21.02.19鑑賞)

満足ならクリック!!
スポンサーサイト