2021-03-01 Mon

2019年制作 邦
監督:天野 千尋
≪キャッチコピー≫
『 - 』
≪ストーリー≫
母親として日々家事をこなし、小説家としても活動する吉岡真紀は、スランプに陥っていた。あるとき彼女は、隣人の若田美和子から嫌がらせを受けるようになる。真紀は美和子がわざと立てる騒音などでストレスがたまり、執筆が進まず家族ともぶつかってしまう。真紀は状況を変えようと、美和子と彼女からの嫌がらせを題材にした小説を書き始める。
≪感想≫
掘り出し物発見!!
これまた年末に素晴らしい作品に出会いました。
かつて巷で話題となった「騒音おばさん事件」をモチーフにしたであろう本作。
主人公の真紀はスランプ中の作家。
新作に取り掛かるも不作続きで日々に焦りを感じている始末。
日々溜まっていく焦りと苛立ちは家族にも影響していて。
そんな中、新居に引っ越した先のお隣さんが何やら不穏なおばちゃんで、
そこからご近所トラブルに・・・。
いやぁー、これまた痛い作品に出会いました。
以前、巷を賑わせた傑作「カメラを止めるな!」のように、物事を一方向から
取りつつ、実はもう一方ではこんな事実がありました的な展開。
そもそも主人公の真紀が自分本位で嫌な奴なんですよねぇ・・・。
旦那も良い人のように見えるけどそこまで協力的じゃないし。
何となく、家庭が破綻しそうな不穏な空気、壊れそうな不穏な空気が
漂っていて・・・。
そこで美和子さんが巻き込まれていくのは観ていてとても
痛くってね。
もちろん美和子さんも狂っている感はあったんですが、全然想定内。
真紀のコミュニケーション不足、いっぱいいっぱいになっている精神状態が
こういう状況を生み出したんですよね。
それを思うと美和子さんが「悪」の印象に染まっていくのは観ていてとても
苦くって。
中盤、美和子さん側からの視点で明かされる真実は、これまで思っていた
自分の印象が色濃くなっていって居心地がとても悪くなりましたよ。
冗談じゃなく観るのを止めても良いかなと思ったりしました・・・。
世間の事件に対する反応も観ていて辛かったなぁ・・・。
マスコミやネット住民たちがどんどん興味に火をつけて、
当事者たちをフルボッコにする。
現代社会のダメな部分を描き出していて。
そうそう。
ちょっと蛇足ですが、真紀の弟くんには制裁を加えて欲しかった。
最後までのうのうと暮らしている感じにちょっとイラっとしちゃったりね。
もう少し制裁を加え成長させて欲しかったです。
キャラクターでいうと騒音おばちゃんである美和子さんが素晴らしかったです。
確かにサイコっぽいんだけど、実は普通の人間で。
このきわっきわのキャラクターがルックも踏まえて見事でしたよ。
物語、訴えたいことについて。
本作はざっくりいうと、物事を一視点から見てるとえらいことになる的なお話。
様々な視点で見ることはもちろん大事なんだけど、いざ、それを実行するとなると
心の余裕が必要なわけで・・・。
現実、それをできている人間は今の時代、そんなに多くない社会になってきているんじゃないかなぁ・・・。
だからこそ凄く、痛い作品に観えてしまったのかな・・・。
最後の着地。
それぞれが前向きになれた素敵な終わり方。
真紀は成長し、物事が上手いこと回っていってね。
ただ、今のご時世を考えると、そんなに上手いこと行かないような気がして。
一度、叩かれた人は粘着質な顔の見えない人たちに、ひたすら叩かれる
ような気がして。
だけど、個人的にはこの終わり方には「優しさ」と「希望」が見えていて
良かったなぁと。
そんな感じで。
年末にこれまた良い作品を観させてもらいました。
ただ、スカッとしたというよりか、ちょっと痛さの方が
残っているかな・・・。
お話、演者共に優れた良作。
こういうミニマムな良作を見つけるのも本当に嬉しいですね。
≪点数≫
8点
(20.12.26鑑賞)

満足ならクリック!!
スポンサーサイト