2018-09-05 Wed

2015年制作 ハンガリー
監督:ネメシュ・ラースロー
≪キャッチコピー≫
『最期まで<人間>であり続けるために―』
≪ストーリー≫
1944年10月、ハンガリー系ユダヤ人のサウル(ルーリグ・ゲーザ)は、アウシュビッツ=ビルケナウ収容所でナチスから特殊部隊“ゾンダーコマンド”に選抜され、次々と到着する同胞たちの死体処理の仕事に就いていた。ある日、ガス室で息子らしき少年を発見した彼は、直後に殺されてしまったその少年の弔いをしようとするが……。
≪感想≫
ナチスのホロコーストもの作品。
とにかく緊張感が溢れる本作。
撮り方について。
本作は撮り方が少し変わっていて。
主人公サウルの視点をそのまま映像化したような。
ちょっとPOV形式のような撮り方をしていて。
ただ、完全にPOVではなくて、サウルの少し後ろや少し前から
グッとサウルの行動を写している感じ。
これがすっごい生々しくて。
観ているこっちはサウルの視点、視野から情報をインプットしていく。
クルックル変わっていく展開の中、当たり前のように流れていく虐殺の風景。
正直、この「当たり前」のように流れていくお話についていくのはとても大変で。
状況や行動に説明が全くないので正直「??」もとても多くってね。
サウルはゾンダーコマンドという立場。
ゾンダーコマンドとは強制収容所内で虐殺されていくユダヤ人たちの後片付けを
させられるユダヤ人のことで、このゾンダーコマンド達もいずれは
処分されていくという存在。
先に書きましたサウルの狭い視点には、このゾンダーコマンドとしての
周りの風景が映し出される。
当たり前のように殺されていく人達。
ただ、それを直接的に見ないようにしているから、ボンヤリ映し出される周りの映像。
それが逆にとてもゾッとして・・・。
とにかくクラクラっとする映像でした。
本作はもちろん実話に基づくお話で。
ホロコーストで思い出すのは「ライフ・イズ・ビューティフル」という作品。
あれもとても悲しいお話だったんですが、本作の描き方はさらに残酷で
緊張感が半端ない。
絶え間なく側にある「死」の恐怖。
そして自らの「死」だけではなく同胞達を失うという「恐怖」と「悲しみ」。
それが本当に当たり前に流れていくので、当事者になると感覚や思考が麻痺してしまう
んだろうなぁって。
最後までサウルには喜怒哀楽の揺れみたいなものがそこまで描かれない。
それは、この過酷な環境下にいるからこそなんだろうなぁって。
正直、サウルの行動に関しては納得いかない部分も多々あるんです。
そもそも先に書いた通り、この過酷な環境の全てにおいての理由みたいなものも
理解できていなくってね。
ただ、そこにある残酷な環境は痛々しいほどリアルで過酷。
この疑似体験は二度としなくても良いですが、やはり心には刻んで
おかなければいけない情報。
これを描くことの意味はきっと二度と起こしてはいけないという
教訓みたいなものなんでしょう。
ズシリと重たい良作。
本作は、アカデミー外国語賞やカンヌ映画祭ではグランプリを受賞。
なるほどねぇ・・・。
内容がヘビーなので、なかなかオススメはしにくい作品ですが、
ぜひみんなに観て欲しい良作でした。
≪点数≫
7点
(18.07.01鑑賞)

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