2018-05-02 Wed

2014年制作 米
監督:イ・イルヒョン
≪キャッチコピー≫
『米軍史上最多、
160人を射殺した、
ひとりの優しい父親。』
≪ストーリー≫
イラク戦争に出征した、アメリカ海軍特殊部隊ネイビーシールズの隊員クリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)。スナイパーである彼は、「誰一人残さない」というネイビーシールズのモットーに従うようにして仲間たちを徹底的に援護する。人並み外れた狙撃の精度からレジェンドと称されるが、その一方で反乱軍に賞金を懸けられてしまう。故郷に残した家族を思いながら、スコープをのぞき、引き金を引き、敵の命を奪っていくクリス。4回にわたってイラクに送られた彼は、心に深い傷を負ってしまう。
≪感想≫
名匠クリント・イーストウッド監督作品。
アメリカ・ネイビーシールズの凄腕スナイパーのお話。
鑑賞後知ったのですが、これって実在した人物の自伝を基に作られた
作品だったんですね。
へぇーへぇーへぇー。
物語の主役はクリス・カイルという凄腕スナイパー。
彼は、30歳で軍人となり4度イラク戦争へ派兵。
仲間から「伝説の狙撃主」と呼ばれ、敵であるテロリストたちからは
「ラマディの悪魔」と呼ばれ懸賞金もかけられた人物。
彼が射殺した人数は200人以上。
2009年に退役した後、PTSDに悩まされながらも、同じ退役軍人を
支援し、その後、2013年に同じくPTSDに悩まされる退役軍人に
射殺されてしまう。
演じたのはブラッドリー・クーパー。
「ハング・オーバー」シリーズや「アメリカン・ハッスル」の時の彼と大違い!!
めちゃくちゃマッチョで逞しい軍人へと変化しておりました。
少しずつ少しずつ壊れていく兵士を見事に演じていて、あの、
何も映らないテレビ画面を見ている表情とか、日常の音に戦場の音を
重ねてしまう所作や心の揺らぎは見事でした。
内容について。
本作は後に「戦争を賛美している」等の批判を受けたそうです。
確かに本作では、主人公のクリス・カイルを英雄的に扱っていました。
見ようによっちゃあ、アメリカ万歳的な感じもしたし、テロリストの悪党っぷりも
色濃く描いているようにも見えたし。
ただ、一方でイラクの人達から見ればアメリカ軍も自分達を危険に巻き込む
嫌な奴らとしても描いていたし、やれ反戦だ、やれ戦争賛美だと、そんなにまで強い
メッセージ性は感じ取れなかったです。
それよりも観ている人の戦争に対する感情がしっかりと反映される作りだったのかと。
鑑賞後に生まれる想いが「戦争」に対する感情と言いますか。
そして、もう一つ。
本作は一人の人間が「戦争」に参加して変貌していく様を丁寧に描いた作品でもあって。
むしろ、本作ではそれを色濃く大事に描いていたのかなと。
本作で描かれる戦争は淡々と戦闘シーンが行われていて
これがまた、実際もこうなんだろうなって思えるような
リアリティの高さでした。
以前観た「ハート・ロッカー」や「ゼロ・ダーク・サーティー」
を思い出しましたよ。
戦闘が行われている横では実際に生活している家族もいて。
僕の思い描いている戦争はやはり太平洋戦争のようなイメージ。
空爆がガンガンなって地上では兵士たちがしのぎを削って命の
奪い合いをしている。
本作ももちろんそうなんですが、現代のお話しなのでより身近で
その恐ろしさを感じることができたと言うか。
ただ、少しだけエンタメ風に描かれていた部分も。
クライマックス。
テロリストの敏腕スナイパーとの対峙シーン。
銃弾をスロー描写にして、ちょっとカッコイイ感じに仕上げていました。
そして、そこからのテロリストたちとの戦闘シーンも、少しだけ
フィクショナルに感じたかな。
これはこれで、見ごたえあってとても良かったです。
先に書いた、クリス・カイルが壊れていく過程。
少しずつ蝕まれていく心は観ていてとてもぞっとしましたよ。
命の奪い合うという普通じゃない精神状態の毎日を過ごして、
通常の日常に戻った時の喪失感と絶え間ない緊張感。
「ハート・ロッカー」の主役のように、ある意味彼は戦争ジャンキーに
なっている部分もあったのかなと。
本当に少しずつなんだけど、変化を観るのがとても痛々しく、
そして「戦争」の恐ろしさを感じました。
本作は実話に基づいたお話し。
僕はその情報を知らずに鑑賞したので、ラストの彼の死を知らせる
字幕が流れて実際の彼の写真等が流れた瞬間、ズシリときました。
エンドロールでは音楽もなく無音なのでさらに余韻がハンパ無くって。
色々と染みてくる作品。
クリント・イーストウッド御大はやはり見応えのある作品を撮ります。
本作も例にもれず素晴らしい作品でした。
≪点数≫
7点
(18.01.21鑑賞)

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