2015-06-08 Mon

2010年制作 米/仏
監督:リチャード・プレス
≪キャッチコピー≫
『彼に撮られることこそが、ニューヨーカーのステータス!』
≪ストーリー≫
1929年生まれのビル・カニンガムは、ハーバード大学を中退してニューヨークに移り住み、広告業界に足を踏み入れる。その後、帽子のブランドを立ち上げるものの一時兵役に就き、除隊後は再びニューヨークでファッション関連の記事を執筆するようになる。やがてカメラ片手に自転車で街に出て、精力的にストリート・ファッションの撮影を始める。
≪感想≫
その男の名はビル・カニンガム。
ニューヨークのストリートでファッションスナップを撮り続けている。
いききった男の生きざま。
まず何といっても彼のポリシーが凄い。
写真を撮る事を仕事としているのではなくあくまでも生きがいとして撮っている。
好きな事を自由に撮り続け活き続けている。
そこには太い信念がある。
そんなことは露ほどにも映らず、軽やかに楽しそうな彼を映し出す。
恐らく観ている誰もが彼の生き方に憧れを抱くのではないだろうか。
とにかく自由で、とにかく楽しそう。
誰彼、分け隔てなく撮っていく彼はとても誠実だ。
例えばセレブの方が高級なものを身にまとっていても私服でなければ撮る事は無いし。
例えば町のバイク便の男のファッションがイケていたらパチリとシャッターを押すし。
彼の世界ではごくごく一般的なヒエラルキーは通用しない。
「着ているのか」「着せられているのか」的な。
彼はとにかく自由。
「仕事」に縛られる事もない。
「お金」に縛られる事もない。
ただそこに存在し好きなだけ写真を撮りまくる。
嬉々として撮り続ける彼の笑顔はいつまでたっても少年のようで。
それでもプロフェッショナルな表情も忘れないところに彼が培ってきた経験と技術が見え隠れ。
逞しいというか。
そういえば。
以前観たドキュメンタリー映画の傑作「シュガーマン 奇跡に愛された男」のロドリゲスも
とても素晴らしい人間でしたが、本作のビルもまた違ったタイプだがとっても
チャーミングで素晴らしい人間でしたよ。
そんな絶対的にゆるぎない彼。
終盤のインタビューで1度だけ熟考し言葉に詰まる部分があった。
「恋愛」について。
「信仰」について。
今までの軽やかな彼もやはりどこかで悩みながら生きてきた事に気づかされる。
好きなものだけを選んで生きてきた彼もやはり色んなものを諦めてきたのであって。
もちろんそれは彼が選択してきたのだが、少しこの一般的な思考に対する余韻が
彼の世界と観客の世界が近づける。
やはり魅力的な人間だ。
ファッションに疎い僕ですが、この人をもっと追い続けたい。
これからどういう生き方をしていくのか興味が尽きない。
とにかくこの魅力的でチャーミングな爺さんから目が離せない良作ドキュメンタリーでした。
≪点数≫
9点
(15.05.02鑑賞)

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