2015-02-25 Wed

2011年制作 邦
監督:刀川 和也
≪キャッチコピー≫
『 - 』
≪ストーリー≫
保育士のマリコさんは、地方にある児童養護施設でムツミとマリナの親代わりとなって寝食を共にしている。そこではやむを得ない事情から親と同居できない子どもたちが住んでおり、ときどき二人はマリコさんをめぐってケンカをすることもある。そんな折、ずっと離れて暮らしていたムツミの母親が、もう一度子どもと暮らしたいと願って施設を訪れる。
≪感想≫
児童養護施設「光の子どもの家」の8年間を撮ったドキュメンタリー作品。
何の説明もなく、何の補足もない。
そこに映るものはリアルな生活とリアルな人間だ。
正真正銘ド直球のドキュメンタリー。
先に少し引っかかった点。
それは、やっぱり説明が無い分、状況の読み取りが困難だったという事。
日常を淡々と映し出している、一切の演出、加工は無いという事で、時折、
言葉を聞き取れなかったりすることもあって。
ぼそぼそっと語る子供の声が聞こえなかったりもして・・・。
ただね・・・。
それも踏まえてもこの作品は素晴らしかったんです。
むしろ、これぞドキュメンタリー作品。
生々しい生活感、リアルな心情がギュッと濃縮されていて、観終わって、とてもグッときたんです。
「隣る人」
子供にとって親とは何ぞや。
本作では何らかの理由で親と一緒に過ごせない子供のリアルな姿が映し出される。
観ていて、
「親としてこうあるべきだ!!」
「子供を手放す親は最悪だ!!」
・・・なんて事は微塵にも思わない。
この子たち、この現状が出来上がっている以上、そういう現実があるのでしょう。
もしかしたら親にも事情があるんだ。
そこまでの過程で何かのっぴきならない事柄があったんだ。
ダメと分かっていても、どうにもならなかったことだってあると思うんですよね。
ただ、そんな、悪く言えば親の都合、大人の都合で犠牲になっている子供もいたりして・・・。
そんな子供たちに必要な人間。
それがきっと「隣る人」なのかなって。
子供は無条件に愛情を欲してくる。
自分を見続ける人、自分を必要としてくれる人。
それが生へのモチベーションが繋がっているかのごとく。
そこから生きる事の楽しさや辛さ、いろんなことを感じ、覚え、成長してく。
甘えや飢え。
それらの純粋無垢な気持ちを受入れ、丸呑みできる存在。
それが親であればとても幸せ。
ただし、それができない親だってもちろんいる訳で・・・。
本作でも子供の母親が出ていましたが、彼女は彼女で子供と一緒に過ごすために
一生懸命頑張っている訳で。
それができない理由もきちっとある訳で。
むむむ・・・もちろん子供にとって親と言う存在はとても大事なんですよ。
ただ、親じゃなくても先に書いた丸呑みできる存在(大人)がいれば成長することは
できるんじゃないのかなって思ったりもしたんですよね。
長く、思い出を共有する大人。
いつもそばにいてくれる大人。
いつも見続けてくれる大人。
無条件で自らに寄り添ってくれる人(隣る人)がいればと。
作中でマリコ先生が子供達と接していて、メチャクチャ腹立つこともあるけど、
ほんのちょっとの良い事でチャラになる的な事をおっしゃってました。
これには「なるほど!!」と思ったのですが、やっぱりその子と向き合う時間が
多ければ多いほど、良い事も増えるし、悪い事も増える。
その時間をたくさん共有することでその子の、その人の人生の一部に
なり得るんじゃないかって思ったんです。
そして、子供、もしかしたら大人になった僕らもそういう存在を求めて
生きているんじゃないかって思うんですよね。
大人になると、それが「友達」であったり「恋人」であったり「家族」であったり種類は
増えてくるんだけど、子供の頃は、そんな事なんて知る由もない。
それを教え、寄り添うのは、最初はやはり、「親」であり「大人」であるんですよね・・・。
本作では、子供たちが無償の愛情を欲するシーンがリアルに映し出されるんです。
愚痴を言う子供や、すねる子供、暴力をふるう子供、泣き出す子供。
それらは一つのサイン。
自分をもっと見てくれっていうサイン。
そこと向き合う「人間」=「隣る人」なんです。
ラストにマリコ先生が子供に語りかける時に見せる涙と言葉。
これはマリコ先生にとっても子供は隣る人なんですよねぇ・・・。
人と人が向き合う事で生まれる形を見せてもらえた感じ。
うーーーん・・・長々とすいません。
着地が難しいや。
とにもかくにも。
能書きをつらつらと書いてきましたが、その存在(隣る人)になる事。
自分に子供ができた時、必要とされる時、無条件で受け入れる存在、形を作らなければと。
そして、そんな「隣る人」をもがきながらも体現していた「光の子どもの家」スタッフ、
保育士さんにはほんとに頭が上がりません。
本当に素晴らしい方々です。
とにかく色んな大人に観てもらいたい。
そんなドキュメンタリー作品でした。
・・・なんて思ったら、劇場公開も終わっているし、DVD化もしていないんですね(号泣)
自主上映会のみで上映しているそうなので、近くの町まで来た場合は是非!!
ちなみに、僕も自主上映会にて鑑賞したんですが、会場は超満員!!
関心ある人がこんなにも多くて、まだまだ捨てたもんじゃないなと・・・。
≪点数≫
9点
(15.01.11鑑賞)

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