2020-07-23 Thu

2017年制作 英/仏
監督:ジャン=ステファーヌ・ソヴェール
≪キャッチコピー≫
『 - 』
≪ストーリー≫
タイでドラッグ中毒になってしまったイギリス人ボクサーのビリー・ムーア(ジョー・コール)は、警察の家宅捜索を受けて逮捕され、刑務所に収監される。汚職、殺人、レイプが公然と行われている劣悪な刑務所で、死の危険にさらされたビリーは、所内に設立されたムエタイチームの門をたたく。懸命にムエタイを習得することで、彼はこれまでの自堕落だった自分と決別し、生きる希望を見いだす。
≪感想≫
ヘビー級のどん底負け犬映画。
タイでジャンキーとなったイギリス人ボクサーのビリーが
警察に捕まって服役する事になる。
そこからビリーのどん底生活が始まる・・・。
なんと、本作は実話を基にしたお話だったんですね!!
僕的に本作が実話だという情報を全く入れていなかったので、
それを知るとまた思うことがグンと増えて。
本作での出来事や映る描写にさらに真実味が増す。
どよぉ〜〜〜ん。
いやぁ〜〜〜、これでもかって言うほどの掃き溜め感。
まずタイの刑務所のどん底感が半端なくって。
見たくない、考えたくもない現実がそこにはあって。
暴力、レイプ、ドラッグ、裏切りやいじめ。
例えば、これまでの刑務所の描き方はそこには仁義やら
友情やらが描かれていたイメージでしたが、
本作に映る刑務所は最低最悪。
どんよりどろどろした世界。
ひたすら陰々滅々とした気分に。
しかもねぇ、ビリーはもちろんの事、観ている僕もタイ語が分からない訳ですよ・・・。
本作ではタイ語にあえて字幕をつけないことで、よりコミュニケーションの
大切さが如実に表れる。
ジミーの置かれている状況が怖いのなんの。
何をしゃべっているのかわからない、ほんの少しの英語とジェスチャー、
周りの雰囲気で感じ取る。
本当に観ていて辛かったっす。
演出について。
本作はカメラワーク等も凝っていて。
ひたすらビリーと近いところから映し出していて。
これが没入感が半端ない。
なんども書きますが、そのどん底感がすっごい身近に感じる。
キックボクシングの試合のシーンもそう。
通常なら俯瞰で全体的に試合を映しそうなところをメチャクチャ
近い位置から映す。
最初は、見にくくって変なカメラワークだなぁとイラッとしたんですが、
最後まで緊張感、没入度の持続ができていて、この作品の内容、世界観には
この撮り方でOK!!ってな気持ちに。
あとね、本作を鑑賞後色々、調べたんですが、本作に出演している方々は
本物の元受刑者等を起用していたんですって。
通りで、そこに映る受刑者たちのひりつく顔や生々しい雰囲気。
泥臭くどん底感が溢れ出ていて。
こいつらとは絶対関わりたくない、ここには絶対に行きたくない。
強く思いましたよ(苦笑)
最悪な環境、恐怖の環境に加え言葉も通じないという極限の状況。
あえて、タイ語の字幕は最低限に抑えて、観ているこっちも
ビリーと同じ環境に投げ出す事で、さらに不快感倍増。
本当に怖かったです・・・。
ここら辺も演出の妙ですね。
主人公ビリーの成長譚。
もともとビリーの生活って荒んでいたんですよね。
罪を犯していたんだから、罰を与えられるのはしょうがないってなもんで。
地獄に落とし込まれてそこから再生するにはやはり簡単ではなくって。
刑務所内で薬はやるは、全く成長する兆候が見られないビリーに辟易していたら
クライマックスのあの展開。
本当に少しずつ少しずつ改善されていく彼の心。
掃き溜めの中にも気の良い奴らはいるし、何かに打ち込める環境はある。
結局、自らの気持ちがとても大切なんだなと思った次第。
もちろん、それだけではどうしようもない外圧もあったりするんだけど、
最後の最後は自分の意志で動かすことができるんだって。
最後は、逃げ出すことを止め踏ん張る事に決めたあの展開。
ビリーが線路で見た希望の光。
確かに彼は成長を遂げていたんですね・・・。
ラストカット、ビリー・ムーア本人が父親役としてビリーと向き合って
終わるんですけど、あの眼差し。
それが過去の自分に向けての眼差しだと思うとめちゃくちゃグッときてね。
とにもかくにも。
爽快さなんて微塵も感じさせない本作。
ドスンと突き刺さる一人の男の再生物語。
堪能させていただきました。
ふぅ〜〜〜、重たい・・・。
≪点数≫
9点
(20.04.12鑑賞)

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