2015-10-01 Thu

2013年制作 米
監督:デスティン・ダニエル・クレットン
≪キャッチコピー≫
『明日からの君の方が、僕は、きっと好きです。』
≪ストーリー≫
問題を抱える子供のためのグループホーム「ショートターム12」で働くグレイス(ブリー・ラーソン)。グレイスは、新入りのジェイデン(ケイトリン・デヴァー)という少女を担当することになる。グレイスは施設の同僚メイソン(ジョン・ギャラガー・Jr)と付き合っていたが、ある日、妊娠していることが判明する。そんな中、グレイスはジェイデンが父親に虐待されていたことに気付き……。
≪感想≫
以前観た傑作ドキュメンタリー「隣る人」。
あの作品も、児童養護施設の日常を追った作品でした。
本作は、同じく児童養護施設をフィクションで包んだ作品。
いやはや、沁みました・・・。
親と子との関わり。
他者との関わり。
生きていく上で必ずそこは通らなければいけない訳で。
僕は親として、子として、なんて答えは無いのだけど何となく切っても切れない普遍の想いみたいなものが
あるんじゃないかって思っていまして。
ただ、それが破綻している関係を持った親子も確実に存在はしていて。
昔、何かで「望まれず生まれてくる子供はいない」的な言葉を聞いたとき、
「そうであって欲しいけど、そうじゃない場合もある。」
とモヤモヤしていたのも事実。
ただ、そんな自分が信じる想いと、このモヤッとした現実を上手く繋げてくれる存在。
それが本作や「隣る人」で描かれている人たち。
「隣る人」のお話は以前のレビューで書いているので置いといて・・・。
本作について。
主役のグレイス。
彼女もまた幼い頃、父親に虐待されてきた人間。
児童養護施設ショート・タームで子供達と接しながらもまた、彼女も過去と向き合って
思い悩む人間。
彼女を通して、自ら望む事の無かった人生からの再生の過程が描かれる。
グレイスの婚約者であり、同じく施設で働くメイソン。
彼も里親に引き取られ過ごしてきた人間。
本作はとても素晴らしい作品だったのですが、一つだけ苦言を呈するなら。
このグレイスとメイソン。
彼らも虐待や両親からの愛情を受けてこなかった人間。
その二人が、施設の子どもたちを見守り育てている。
それはとても良いのですが、せめて一人は普通に過ごしてきた環境の人間に
してほしかったな。
これではやっぱり、同じ環境の人間だから、その子供たちの気持ちに寄り添えるんだって
思ったりもしたもので。
一応、その二人の他にも職員は何人かいて。
その一人である、新人のネイト。
こいつがまた、デリカシーが無い奴で・・・。
いくらなんでも、こんなにデリカシーの無い奴がすぐに現場に出てこれるかっていうのも
不思議な話ですが・・・。
ただね・・・。
ネイトが最後にいくにつれて凄い成長していくんですよね。
自閉症の少年のために粋な計らいを見せた時。
とてもグッときましたよ。
やっぱりどんな人間であれ、子供たちに寄り添える事ができるんだって。
あとはですねぇ・・・。
施設の子どもたちも良かったんです。
特に良かったのが年長組の男の子マーカス青年。
彼の自らの想いを乗せたラップには心底グッときましたし、施設に新しく入所したジェイデンのために、
とった粋な行動には本当に素敵でしたね。
彼も、親からの虐待を受けて塞ぎ込んだ青年。
ラストシーンでの彼のその後のお話を聞かされた時、ほんとに良かったなって。
傷つけるのも、癒すのも、離れるのも、寄り添うのも他者。
それがどんな繋がりだろうと。
親であれ、家族であれ、友達であれ、他人であれ・・・・。
人と人との関わりの在り方とは。
痛々しくも素敵な瞬間もあって。
そんな瞬間を上手に映し出す。
思わず感涙でした。
本作、演出も素晴らしかったです。
オープニングとエンディングの構成が一緒だったんです。
施設の外で職員が談笑していると、突然、施設内から少年が脱走を試みる。
同じような場面なのに、見えてくるものが違う。
オープニングからは施設の閉塞感、そこから起こる悲しみの空気を。
エンディングからは未来への希望、明日からの暖かい光を。
この対比がとても素晴らしいなって。
とにもかくにも本当に素晴らしい作品。
「隣る人」とセットで観るとさらに良いんじゃないでしょうか。
少し重たいですが、おススメです!!
≪点数≫
9点
(15.08.08鑑賞)

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